日本から海外進出を目指すEC事業者にとって、ネット通販におけるピークシーズンを正確に把握することは不可欠です。この知識はブラックフライデー、サイバーマンデー、クリスマス、さらにはサマーセールなどの需要が高まる時期を、機会損失することなく最大限に活用するために重要となります。日本発信のECプラットフォームのプロモーション活動を、これらのピークシーズンのタイミングと合わせることで、認知度を大幅に高め、より幅広い海外ユーザーの集客を実現できます。戦略的に売上促進の施策を実施することで、売上アップだけでなく、高品質でブランド力のある日本製品を新しい市場に紹介することにもつながります。
越境ECの「ピークシーズン」を狙う販売戦略
越境EC事業者が海外市場において効果的な販売戦略を展開するためには、販売対象国の主要なイベントを把握することが重要です。例えば、Amazon プライムデーや中国のシングルデーのような対象国の大規模なイベント、またはサマーセールや歳末セールなどの特売日がいつ発生し、その国のホリデーシーズンがいつなのか、それによって消費者の嗜好や購買パターンはどのように変化するのかといった情報です。販売戦略を策定する際は商戦期のタイミングだけではなく、商品選定、価格戦略も併せて検討する必要があります。一方で、需要予測を行い適切な在庫確保、供給計画など想定されるリスクや課題を事前に把握しておくことも不可欠です。この記事では、いくつかの重要なポイントを掘り下げて検証してみます。
- ピークシーズンの海外配送対策
ピークシーズンは注文数が急増します。配送業者によっては、サービスの品質を保ちながら需要に対応するため、ピークシーズンの追加料金を実施することもあります。事業者にとってはこのような追加のコストを事前に予測しながら計画を立てる必要があります。例えば、事前に配送業者と料金交渉を行ったり、代替案を検討したりすることが考えられます。また、消費者が送料を負担する場合にはせっかくのセール時期であっても追加料金などが含まれると魅力的な価格ではなくなってしまうかもしれません。事業者が送料の一部を吸収し、消費者にお得感を感じさせるといった工夫も検討しなければならないでしょう。
- EC事業におけるマーケティングカレンダーを活用
実店舗やECサイトの売り上げアップを目指すためには、世界の年間行事やイベント(Eコマースマーケティングカレンダー2024)を把握する必要があります。タイムリーなキャンペーンの実施や新商品の発表などを展開することで、消費者の関心を一挙に獲得できる可能性が高まります。消費者が活発になる繁忙期は対象国によって異なりますが、越境EC販売を展開する際は年間のマーケティングカレンダーを作成することをお勧めします。
- ホリデーシーズンにおける小売トレンドを理解する
ピークシーズンの商機を最大限に活用するために小売り業におけるホリデーシーズンのトレンドを理解することが成功のカギとなります。どのような商品が人気を集めるのか、どのような広告やプロモーションが効果的なのかを過去の売上げデータや消費者の行動分析などから把握します。適正在庫の見極めや人気商品の十分な在庫確保によって、よりターゲットに訴えるマーケティングが可能になります。また競合他社の動向や戦略を把握し、自社の差別化ポイントを見つけ出すことも売上拡大につながる要素となるでしょう。
グローバル事業向け海外配送戦略の構築
越境EC市場でビジネスを展開する事業者にとっては、物流の円滑化とスピードアップが重要なポイントとなります。このパートではその攻略方法をひとつずつひも解いていきます。
- 税関コンプライアンス
税関規制を理解することは重要です。事業者は取り扱い商品に関する知識だけでなく、それに伴う販売国の関税制度も調査し理解する必要があります。販売国での通関にかかわる問題を未然に防ぎ、配送の遅延などが起こらないようにすることに加えて、新しい市場へのスムーズな販売活動につながります。また、事業者が各国で要求されるさまざまな輸入関税や税金、及び書類手続きを理解し遵守することで、問題回避するだけではなく、条件によっては事業者に有利な方法も選択できるため、戦略的に販売国を決めたり商材の価格設定をすることも可能となります。
- 海外発送における戦略
商品の発送に伴い、物流戦略は多角的に構築することが必要となります。特に越境ECにおいてはコスト、スピード、信頼性など、あらゆる角度からバランスを取ることが求められます。例えば国際エクスプレス便を活用することで、購入者へスピーディーかつ安心の海外発送サービスを提供できます。効率的な配送オプションを提供することは消費者の購買意欲を高め、売上の最大化にもつながります。一方で事業者にとっても配送時間の短縮や輸送コストの効率化はビジネス全体に良い影響をもたらします。DHL Expressでは、複数の宛先の貨物を一つにまとめて海外へ発送し、通関後個別に配送する「DHLエクスプレスブレークバルク」というオプショナルサービスを提供しています。このような業務効率化を検討することで、消費者の購買体験を満足できるものにするのはもちろん、売上向上も期待できるはずです。
- 配送に関する購買者の期待に応える
海外の通販サイトでショッピングをする多くの購買者が、荷物がいつ到着するか正確な情報を知りたいと考えています。発送直後から透明性のある情報提供はもちろん、翌日配達、即日配達、時間指定配達、環境に優しいグリーン配送など購買者の需要に応じたさまざまな配送の選択肢を提供できることも重要となります。例えばDHL Expressのオンデマンドデリバリーサービス (事前配達通知・受取方法指定サービス)では購買者の都合にあわせてDHLのサービスポイントや宅配ロッカーでの引き取りを含む6つの配送オプションを提供しています。期待に応えることは、顧客満足度を高めリピート購入につながり、事業者に対する信頼が増すこととなるのです。
強靭なサプライチェーンの構築
越境ECに関するグローバルなサプライチェーンの整備の重要性が広く認識されるようになった今、次の重要なステップは、強靭なサプライチェーンを構築することになります。世界市場の消費者の多様な需要に迅速に対応するには、これが不可欠であることは間違いありません。
- 柔軟性と耐久力
急速に進化するEC業界では、市場の変化、需要の変動、ロジスティクスの課題に迅速に対応できる力が必要となります。供給不足や需要の急増など、予期せぬ事態が発生しても揺らぐことのない耐久力のあるサプライチェーンが構築されていれば、戦略の方向転換も可能となるからです。事業者が長期にわたってビジネスを継続し、また消費者からの信頼を維持するためにも重要な要素であることに他なりません。
- 自動化の役割
自動化は、サプライチェーンの耐久力を強化する上で重要な役割を果たします。注文処理、在庫管理、さらには配送含めフルフィルメントの一部などの主要なプロセスを自動化することで、事業者はこれらの業務にかかる時間や人為的ミスの可能性を大幅に削減できます。また、自動化することで、効率や精度を損なうことなく注文量の増加に対応できるため、ビジネスの拡大に必要な成長の幅も際限なくひろがります。
- 在庫管理
即時かつ可視化された在庫管理は、耐久力のあるサプライチェーンを構築する上でもう一つの重要なポイントです。事業者が常に最新のデータを把握することで、より正確な販売計画と予測をすることができるからです。過剰在庫や在庫切れを回避し、適切な商機を見極め、消費者の購買意欲に応えることで、絶大な信頼を得ることができます。事業者は在庫状況の変動に応じて地域の需要に即座に対応し、配送ルートを変更したり、その時のトレンドに沿って在庫を補充したりするなど、データに基づいた迅速な意思決定が可能です。
- 顧客のニーズを満たす
耐久力のあるサプライ チェーンを構築する究極の目標は、不測の事態や課題に関係なく、事業者が安定して消費者のニーズに対応できるようにすることです。物流環境を整えることで、事業者が世界中にいる競合他社との競争から抜きんでて、また、消費者からの信頼性の高い小売店として高評価を得ることができます。
越境ECはさまざまな変化やリスクを考慮して運用する必要があり、すべての要素がバランス良くつながるよう設計されなければなりません。特に強固な内部基盤として物流環境を整えることは、時に利益に直結するほどの影響力を持つことがあるのです。