国際貿易に携わる企業にとって、通関手続の知識はグローバルビジネスで成功するために不可欠です。2023年には、日本の輸出額が初めて100兆円を超え1、今後ますます拡大する海外市場を主戦場としてビジネスを行う企業にとって、効率的な通関手続きの重要性はいくら強調してもしすぎることはありません。
ステップ1:輸出書類を準備する
正しく必要な情報を網羅した書類作成は、スムーズな通関の基本です。このステップでは、お客様の貨物がスムーズに通関できるよう、輸出書類に記載すべき情報についてご説明します。
正確な商品説明
税関職員は、出荷される製品を国際的なルールに沿って正しく分類する際に、輸出者からの説明に基づいておこないます。出荷する製品の材質、用途などの情報は、輸送時の取り扱いや保険の目的でも必要な情報になります。
HSコード
HSコード(ハーモナイズドシステムコード)とは、統計品目番号とも呼ばれ、国際貿易において輸出入する商品を分類するために使用される標準化されたコード番号です。このコードは、関税や規制が適用される要件を確認するために不可欠です。
輸出品を正しいHSコードに分類することで、通関での遅延を回避し、スムーズな輸出通関が期待できます。初めて日本から出荷する際など、HSコードが不明な場合は税関ホームページなどのほか、通関業者や物流企業に問い合わせ、正しいHSコードに分類しましょう。
ステップ2 : インコタームズを理解する
インコタームズとは
インコタームズ(International Commercial Terms)とは、国際取引における買い手(輸入者)と売り手(輸出者))の責任範囲を定義する貿易取引条件です。貿易取引において、輸送費、保険、通関のほか、国内輸送や積み込み時の取り扱いなどについて、売り手または買い手の、どちらの費用負担と責任で行うかを明確にするものです。
おもなインコタームズには、以下のようなものがあります。
- FOB(Free On Board : 本船渡し):売り手は、商品が原産港で船に積み込まれるまで責任を負います。
- CIF(Cost, Insurance, and Freight:運賃保険料込み条件):売主が商品代金、保険料、仕向港までの運賃を負担します。
- EXW (Ex Works:工場渡し):買い手は、売り手の敷地からのすべての費用と輸送に責任を負います。
通関におけるインコタームズの影響
- 通関の責任負担:インコタームズは、輸出入通関における責任も定めています。DHL Expressは、インコタームズがお客様の貿易取引に合致しているか確認するお手伝いをいたします。
- リスク管理:インコタームズは、不正確な書類や情報が原因で商品が税関で留め置かれた場合などの際の、解決のための費用負担と責任も定めています。
- 費用負担:インコタームズは、関税などの税金や通関手数料などの通関に関連する費用をどちらが負担するかを定めています。
適切なインコタームズの採用
貿易取引において、適切なインコタームズを選択することは、リスク管理、コスト管理、スムーズな通関のために極めて重要です。以下にインコタームズを選択する際に考慮すべきポイントをご紹介します。
- 輸出の経験度:輸出手続きの経験が乏しい場合は、CIFのようなインコタームズを採用される方がよいでしょう。
- 利用可能なリソース:通関手続きには時間だけでなく、規制を熟知した人的リソースも必要です。人的リソースが限られている場合には、買い手が輸入通関に責任をもつFOBのようなインコタームズを選択することで、負担を軽減することができます。
- 買い手との関係性:EXWのように、買い手が多くの責任を負うインコタームズは、買い手にとって魅力的でない場合があります。買い手と協議の上、双方にとって有効なインコタームズを選択するとよいでしょう。
ステップ3:通関のための申告価格の決定
貨物の価格を正しく申告することは、非常に重要です。輸入国では、この申告価格をもとに、 輸入関税や付加価値税(VAT)、消費税などが計算されます。 また、特定のライセンスや許可証の要否など、他の分野にも影響を及ぼす可能性もあります。
貨物の価格が通関に与える影響
- 関税の計算:輸出貨物の申告価格は、関税額を計算する際の根拠となります。故意に過小に申告すると、貨物が税関で留め置かれたり、罰則を科される可能性があるため注意が必要です。
- VATの計算: 多くの国では、輸入品に課される付加価値税(VAT)を計算するために、申告価額が使用されます。正確に算定し、適正なVAT額を支払いましょう。
- ライセンスおよび許認可:輸入国によっては、一定の価額を超える貨物に対して許認可が求められる場合があります。貨物を正確に申告することで、これらの規制を遵守することができます。DHL Expressは、必要なライセンスや許可の要否を確認するお手伝いをいたします。
- DTP(Duties & Taxes Paid):DTPとは、関税・消費税を売主に請求するDHL Expressのオプショナルサービスです。関税・消費税を含む発送料金の全額を、荷送人またはアカウントホルダーが負担するこのオプションを選択することで、通関時に発生する関税などの税や諸経費を輸入者が負担する必要がなくなります。
通関サポートについては、オールインワンのポータルサイト「MyGTS」をご覧ください。
ステップ 4:税関での通関手続き
通関
国境を越えた輸送には通関手続きが伴います。輸入国の税関で必要書類を提出し、輸入許可を受けるための輸入申告手続きが必要です。必要な情報を正確に記載した書類を提出することは、貨物の遅延や罰則、あるいは差し押さえを避けるために不可欠です。
通関手続きの流れ
- 書類の準備:すべての必要書類が揃っていて、記載事項が正確であることを確認する。
- 書類および貨物の検査:税関当局は、書類を確認し必要に応じて貨物の内容物や規制への準拠を確認するために、貨物の内容品を検査することがあります。
- 税額の決定:税関職員は、商品の分類、価格、数量、原産国などに基づいて、適用される関税と税金を算出します。
- 支払い:関税および税金は、原則として輸入が許可される前に支払わなければなりません。
- リリース:関税と税金が支払われ、すべての要件が満たされたことが確認されると、貨物は輸入許可となり、配送のためにリリースされます。
関税
国際輸送に伴う諸経費はどのぐらい必要なのでしょうか?このような質問は、しばしば国際貿易の実績が少ない企業から寄せられることがありますが、一概に答えるのは難しい問題です。その理由は、各国が輸入品目ごとに異なる関税率や規制を適用しているためです。
関税や消費税、付加価値税(VAT)などの税額は、発送する商品の種類、申告価格、原産国など、いくつかの要因によって決まります。これらの課税額や適用される規制などを事前に正確に把握することは簡単ではありません。
もし関税を支払わなかった場合はどうなるのでしょうか?以下のような深刻な影響を受ける可能性があります:
- 貨物の遅延および留置手数料が支払われるまで、貨物は税関で留置されます。
- 保管料商品が税関で保管されている期間、保管料が発生する場合があります。
- 罰則と罰金:関税および諸税の不払いに対して税関当局に罰則および罰金を課される場合があります。
- 法的措置:場合によっては、未払いの通関手数料を回収するために法的措置が取られることがあります。
- 信用へのダメージ:不払いは、信頼できる輸入業者としての信用を損ない、将来の輸入業務に悪影響を与える可能性があります。
Tax IDの理解
Tax IDとは、納税者識別番号のことを指し、付加価値税(VAT)の登録事業者に割り当てられる固有の識別番号です。輸入者のTax IDの情報を事前にご提供いただくことは 、以下の理由からとても有益です:
- VAT還付請求:VAT登録をしている国に商品を輸出する場合、その商品に支払ったVATの還付を請求できる場合があります。
- 通関手続きの円滑化:通関時に、Tax IDの明示が必須の輸入国もあります。
- 法令順守:Tax IDを取得し、取引国のVAT規制を理解することで、法令を遵守し罰則を回避することができます。
ステップ5:通関の遅延とトラブルへの対応
通関遅延のよくある原因
- 書類の誤りや不備:通関書類の誤りや記入漏れは、輸出入通関手続きの遅延の原因となります。
- 税関判断に対する異議:申告した内容と税関の判断に相違がある場合、貨物はさらなる調査のために保留されることがあります。
- 禁止または制限されている品目:貨物の中に、輸出先の国で禁止または制限されている品目が含まれている場合、税関で手続きが保留されます。
- 保安上の懸念:税関当局は、貨物が安全上のリスクをもたらすと疑われる場合など、安全上の理由から貨物を留め置くことがあります。
以下の品目はDHL Expressで取り扱いを禁止しております。これは仕出国、仕向国、又は輸送経由国の政府または地方自治体が法律・規制により禁止している品目も含まれます。また、国際輸送の場合、配送国によってそのほか禁止項目がある場合があります。以下に記載の無い品目でもDHL Expressで配送を禁止しているものがあります。
- 金銀塊(金塊、金の延べ板など)
- 現金(法定通貨―署名済み小切手・紙幣・硬貨)
- 銃器、弾薬、爆薬/爆発物(ライフルスコープ、空の爆発物、エアガン、レプリカ、テストピースも含む)
- 人骨(遺体・遺灰)
- 動物のはく製、動物の骨、灰、皮(象牙、サメのひれ、毛皮など)等 CITESに輸送を禁止されているもの、もしくは現地法律で禁止されているもの
- 非合法貨物(偽造品や麻薬など)
- 生きた動物(含哺乳類、爬虫類、魚類、無脊椎動物、両生類、鳥類、昆虫等)
- IATA PI968 section IIに基づくリチウム金属バッテリー
- 貴石単体
以下の品目は、DHL Expressでは取扱いを制限している品目で、事前に詳細の確認が必要となります。
- エアガン、テーザー(スタンガン)、模造またはレプリカの銃器、銃器部品、レプリカ弾薬(ライフルのバット、トリガーメカニズム、ネジ/ボルトなど、機能的な銃器を制作することのみを目的として製造されたものを含む)
- 申告額EUR 500,000以上の骨董品、商業目的の美術品
- 申告額EUR 500,000以上の収入印紙および封帯
- 申告額EUR 10,000以上の免許所有する製薬メーカーの医療大麻、および合法的な錠剤または液体
- 申告額EUR 500,000以上のたばこ(電子たばこは別規制有)
- 申告額EUR 2,000以上の記念コイン・メダル
- 香水、アフターシェーブ、エアゾール、引火性物質、ドライアイス、生物学的物質、国連分類危険物、国際航空運送協会規則(IATA)、道路危険物協定(ADR)、国際海上危険物規則(IMDG)で指定された危険物を含むが、これらに限定されない危険物
- 申告額EUR 500,000以上の金融商品 (携帯電話やモバイル端末類の起動済みSIMカード、クレジットカード、ATMカード、無記名小切手、イベントチケット、宝くじ券、現金為替、郵便小為替、無記名株券、未使用郵便切手トラベラーズチェック等)(※個人発送は不可)
- 毛皮
- 申告額EUR 100,000以上の宝石・金銀宝飾品・腕時計(物品単体の価額がEUR 5,000以上のもの)
通関トラブル解決のために
通関上の問題を速やかに解決するためには、税関との積極的なコミュニケーションが必要です。当局と綿密に連絡を取り、通関が遅れている理由を把握し、必要な情報や説明を提供しましょう。
事前に通関書類を注意深く見直し、誤りや漏れがないかを確認し、申告価格、商品の原産地、または規制への準拠を裏付ける追加書類を提出できるようあらかじめ準備しておくことも大切です。
税関の問題解決には時間がかかることがあるため、税関当局とのコミュニケーションは忍耐強く続けてください。
DHLのペーパーレス取引サービスをご存知ですか?
ペーパーレス取引サービス(PLT)では、通関書類を電子化して送信することができ、印刷して貨物に貼付する必要がありません。貨物の準備に割くお客様の貴重な時間を短縮するとともに、紙や印刷にかかるコストの削減を後押しし、環境への貢献も実現する無償のサービスです。
ペーパーレス取引サービス(PLT)でできること
- 時間の短縮-インボイスを貨物へ直接貼付する必要がありません。
- コストの削減-印刷や紙にかかるコストを減らせます。
- 遅延の減少-通関書類を電子データとして取り扱うことで、スピーディーな通関手続きが期待できます。
- 環境への配慮-紙や印刷に伴う消耗品の使用を減らします。
通関手続きを円滑に済ませ、お客様がビジネスに専念できるように、通関に関するサポートも幅広くご提供しています。
国際輸送と通関手続きを理解する
貿易の複雑さ乗り越える国際ビジネスで成功するためには、通関に関する知識、正確な書類作成、効率的なプロセスが必須です。このガイドに示されたステップを参照することで、企業は輸出業務を効率化し、遅延を最小限に抑え、予期しないコストや罰則のリスクを減らすことができるでしょう。
DHL Expressでは、さまざまな輸送ソリューションでお客様の国際輸送の安定化とともに、専門的なアドバイスなどのサポートを提供させていただきます。
DHL Expressのビジネスアカウントを開設し、国際ロジスティクスを強化してビジネスの成功を目指しましょう。