持続可能な航空燃料を使用して、航空輸送時の二酸化炭素排出を削減するDHL Expressの新しい環境ソリューション、GoGreen Plus。いち早く採用された企業様にインタビューを行い、導入の経緯や目的、その効果などをお伺いしご紹介いたします。初回にご登場いただくのは、半導体製造装置大手SCREENセミコンダクターソリューションズ様です。同社で、GoGreen Plusの採用を決断されたポストセールス統轄部 副統轄部長 樋爪裕子様、および環境対策の取り組みをリードするCSR統轄部ESG推進部 環境推進担当課長 橋本正典様、マネジャー 渋川潤様にお話しを伺いました。
コア技術を基軸に、イノベーションを重ねて80年
DHL取材担当 ーー 御社は昨年80周年を迎えられましたが、まずは貴社のビジネスについて教えていただけますでしょうか。
ポストセールス統轄部 副統轄部長 樋爪裕子様(以下、樋爪様): はい、半導体製造装置の開発設計・製造販売を行っております。長年培った洗浄、エッチング、フォトリソ、画像処理を技術のコアとして、市場をリードしています。
主力の半導体洗浄装置については、グローバルシェアNo.1(会社調べ)です。80年前の1943年、当時はドイツから輸入していたガラススクリーンという印刷製版用の部材を、当社が初めて国産化しました。そのガラススクリーンの製造に欠かせない表面加工や画像処理の技術を他に応用できないかということでイノベーションを積み重ねてきた歴史が、現在の当社のエレクトロニクス事業の発展に繋がっています。
ーー 半導体のビジネスは、技術の日進月歩で競争も激しいと思いますが、SCREENセミコンダクターソリューションズ様の強みはどこにあるのでしょうか。
樋爪様:半導体製造装置を事業化したのは1975年で、比較的早くから半導体製造事業を行っていたことがひとつ。そのほかに、当社はお客様に寄り添い、情報共有をしながら製品開発を行っています。これにより、お客様のニーズをいち早くつかみ、先行して次の技術開発ができる体制が築けています。これは半導体メーカーであるお客様から認められている証であり、主に洗浄の技術などでリーディングカンパニーとしての今の地位に繋がっていると思います。
CSR統轄部ESG推進部マネジャー 渋川潤様(以下、渋川様):例えばウェーハの直径はそれまで標準の200mmから、今では300mmが主流になっていますが、世界で初めて300mm対応の半導体製造装置をリリースしたのが当社です。
ーー 製造装置の販売に伴うポストセールス、つまり保守部品を扱う難しさはどこにありますか。
樋爪様:当社の製品は、お客様のニーズにお応えしてそれぞれ仕様の異なる製品づくりを行っておりますので、どうしても少量多品種になってしまいます。つまり、お客様の仕様によりパーツの種類や数が異なります。そして、それらがたった1個不足しただけでも、お客様の半導体製造ライン全体を止めて大きな損害を出してしまいますので、アフターサービスはとても重要です。
部品の種類が多いのですべて在庫で対応するのではなく、日本からの緊急輸送などのスピード輸送が必要になります。年間取り扱い品目約2万種類の保守部品のうち、半分以上はお客様ごとの特有部品が占めています。
省エネルギーの製品開発で環境に貢献する
ーー CO2排出削減に関して、どのような課題を感じていらっしゃいますか。
CSR統轄部ESG推進部 環境推進担当課長 橋本正典様(以下、橋本様):当社ではサプライチェーン全体でのCO2の排出の中でも、Scope3の全カテゴリーでの排出削減が課題であると考えています。特にScope3 カテゴリー11販売した製品の使用によるCO2削減が重要で、省エネ性能の高い製品を開発することが必要になります。
ーー 御社のサステナブルなビジネスの取り組みにはどのようなものがありますか。
橋本様:例えば直近で新しい工場(S3-5:エス・キューブ ファイブ )を立ち上げましたが、事業を拡大して新しい工場が増えていく中でもカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げており、そのために例えば、再生可能エネルギーの導入を各拠点へ拡大しています。また、省エネルギー性能の高い設備への更新なども計画的に行っています。ほかには、主に廃プラスチックなど廃棄物の削減や、水の使用量削減なども継続的に進めています。
ーー 半導体製造の現場では大量の水が使われますね。
渋川様: はい、これまで半導体製造では水の清浄度を高く維持するため、常に水を流しながらウェーハ処理に使用しない水は排出していました。そのため無駄になる水も多かったのですが、一部の最新鋭の装置では、フィルターを通してきれいな状態にして再利用できるようにし、水の使用量を削減しています。
橋本様:水不足の地域などのお客様からは、水の使用量を抑制できる装置の要望もありますので、それにお応えして地域社会に貢献することも重要だと考えています。
環境ソリューションも業界に先駆けて
ーー 今回GoGreen Plusを知ったきっかけを教えてください。
樋爪様:コロナ禍以降、部材の不足などで部品の調達が難しくなった時期があり、保守部品の緊急輸送件数が多くなっていく中で、DHLの営業担当の方から、新しいCO2排出削減のソリューションとして提案があり知りました。それまでSAFのことは、日ごろのニュースなどで見聞きして知ってはいましたが、自分たちのビジネスに還元されるサービスとして実用可能だというのは、DHLからの提案で知りました。
ーー GoGreen Plusの導入は、どなたが決断をされましたか。
樋爪様:これは私が決断しました。装置本体の輸送は、お客様との貿易条件(FCAなどのインコタームズ)の関係で輸送手段はお客様自身が選択し手配されますが、保守部品のように当社が輸送手段を選択できる場合は、100%排出削減ができるGoGreen Plusで輸送することも手段の一つであることから、導入を決めました。アフターパーツだけでなく、当社の小口輸送でDHLを利用する際にも、GoGreen Plusで輸送するようにしました。社内の賛同を得なければなりませんでしたが、他部署もみな環境への問題意識をもっていましたので、必要な投資であると理解をしてくれました。
ーー DHL以外の国際輸送業者から同様の排出削減の提案はありましたか。
樋爪様:その後数社から同様の提案はありましたが、一番最初にご提案いただいたのはDHLでした。他の輸送業者と違い、DHL Expressでの輸送はドア・ツー・ドアなので、輸送一件あたりの排出削減量が分かりやすいというのも決め手でした。
ーー コストの増加など、導入にあたり抵抗はありませんでしたか。
樋爪様:たしかにSAFへ投資する分のコストは上がってしまいますが、コストアップは、他に無駄な部分を削減するなどサプライチェーン全体で吸収したいと思います。また経費としてアップしたとしてもESGの観点から、輸送における環境負荷削減に先行して投資するという意味で必要だと考えています。
ーー DHLのGoGreen Plusでどのような効果を期待しますか。
樋爪様:環境ISOなどの認証を取得していることが、今ではビジネスをする上で当たり前の条件になっています。そのように、Scope3の排出削減に関しても、DHLのGoGreen Plusのように認証機関の証明書があることが当たり前に必要となる時代が来るのではないかと思います。
ーー 更なる環境への取り組みや意気込みを教えてください。
橋本様:当社のCO2削減目標は、2030年までに気温上昇2℃を十分に下回る水準に抑えるために必要な削減量を整合的な目標としてSBTiの認定を受けていましたが、この度2024年1月、さらに高いハードルとなる気温上昇を1.5℃に抑制するために必要な水準として、SBTiの認定を更新しました。そのため、ますますScope3の排出削減が重要になってきます。
渋川様:Scope1、2、3のサプライチェーン全体のCO2排出の中で、当社で一番割合が大きいのがScope3のカテゴリー11、つまり販売した装置の使用による排出です。ですので、これからも省エネ性能の高い装置を開発していくことが重要になってきます。
橋本様:Scope3のすべてのカテゴリーの排出削減は大切なので、今後もDHLには環境対策を進めていただいて、物流パートナーとして協力していただきたいと思います。
樋爪様:DHLは、さすが欧州に本部のある物流企業だなと思います。いち早く私たちにGoGreen Plusをご紹介いただき感謝しています。
■ DHL営業担当者より
SCREENセミコンダクターソリューションズ様は、私が担当する京都エリアにおけるエクセレント・カンパニーです。かねてより、Scope3における排出削減の取り組みを重要視されていましたので、GoGreen Plusのサービスが開始されてからいち早くご提案させていただきました。
近い将来、航空輸送においてGoGreen PlusのようにCO2排出をインセットで削減していることが当たり前となる日が来ることになると思います。環境意識の高い欧州地域とお取引をされているお客様だけでなく、様々なインダストリーのお客様に広くご利用いただけるよう当サービスをお勧めしていきたいと思います。
DHLジャパン株式会社
ナショナルセールス・営業企画&マーケティング本部 西日本統轄営業部 第1エリア
前田裕基
■ お客様プロフィール
会社名:株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ
設立: 2006年
事業内容: 半導体製造装置の開発・製造を行うSCREENホールディングスの中核企業。京都の地で創業し、技術革新とお客様のニーズに寄り添った製品開発を重ね、昨年グループ創業80年目を迎える。
ウェブサイトURL: https://www.screen.co.jp/spe/